【募集終了】老木は、かく語りき

（クリーニング前の内観写真です）

窓辺で寛ぐふたりのこと。アトリエ事務所のように、仕事に打ち込む彼らのこと。

仰々しい門ですが。物件のオートロックです。外観はコンクリート。デザイナーズという感じですが、先に見える緑に、心ちょっとほっこり。

3階まで階段です。エレベーターはありません。

玄関を開けると。コンクリートの壁面に覆われた室内の廊下。ダウンライトに照らされたシューズボックスを背に。光のさす方へ。

1LDKの間取りですが、スペースを仕切る引き戸を開け放つと、広々としたワンルームの様相。3面の窓、木々の緑と、ひときわ印象的な、木の幹。

キッチンはIHコンロ。隣の窓際に設えられたカウンターを使えば、広々クッキング。

老木「そろそろ、良いかね？」

aeTe「どうぞ」

老木「何年前かのう。カウンターが2つあるって言うんで。ふたり暮らしのアベックが、仲良く作業をしとってのう」

aeTe「はあ...」

老木「上部の収納に仕事の道具入れておったのう」

aeTe「はあ...」

老木「ふたり暮らしにしては、収納がちと不足していたようでな。ある時は、ひとりで住んでいた方がいてのう。ひとり暮らしなら、不足はなさそうだったのう」

aeTe「はあ...」

老木「天井にシーリングのレールと、室内で物干しする際に使えるアレがついておってのう」

aeTe「まだ...続けますか？」

老木「まあ、引っ込みがつかなくなってしまったからのう。続けるしかあるまい」

aeTe「はあ... 」

老木「これがLDKと居室を分ける引き戸じゃ」

aeTe「無理して続けなくて良いですよ」

老木「お手洗いには小さな手洗いもついておるぞ」

aeTe（哀れな...）

老木「前に住んでいた人も、その前の人も。みんな、この洗面所を気に入っていたのだよ」

aeTe「おお、これは良いかも」

老木「浴室も人気の場所でな。フロストのガラスの先、緑の気配がするじゃろう。大理石調のパネルがホテルの浴室のようじゃろう」

aeTe「たしかに、どこかのオーベルジュみたいですね」

老木「みんな、ワシの前を通り過ぎていった。ワシの前にソファを置いて。寛いで。ある時は、遠くからワシを眺めて。微笑んでいたのじゃ。そして、次の場所へ旅立っていったのじゃよ」

aeTe「参考になりました。ありがとう御座います」

さて。なんで老木に登場頂いたかと言えば。やっぱり、窓の外に力強く伸びるこの木の幹が、このお部屋のハイライトだろうと思ったからです。窓の多い格好の良いデザイナーズマンションは数ありますが。窓枠が切り取る太く隆々とした木の幹と緑の景色。これはなかなかお目にかかれないな、ということで。老木に登場頂いたわけです。なお、この木が老木と呼べるほどの樹齢なのかは、確認をとっておりません。

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